2011.03.29 Tuesday

情報を回そう!

 中沢です。

まずは、このたびの震災で被害に遭われた方々、またそのご家族ご友人の皆様に心よりお見舞い申し上げます。
そして以来続く原発事故の状況も大変気がかりです。

私たち海外在住の日本人には2つのルートから情報が入ってきます。
一つは現在住地の報道、そしてもう一つはインターネットを主に日本から発信される情報源や報道です。

既に日本でも少し報道されているようですのでお気づきの方も多いと思いますが、日本の報道とこちら、例えばドイツの報道はかなり差があるように思います。
差がある、というのは、報道の仕方の温度差とでも言えばよいでしょうか。
もちろん中にはきちんと取材してないだろ!的な報道もあるようですし、ドイツにおけるいわゆる民間放送の番組などでは誇張やドラマティックな表現のものもあるようです。
私が主に見聞きしているのは日本で言うところのNHKにあたるような公的放送とラジオがほとんどですので、幸い感情を逆なでされるようなものは目にしていません。

基本的にはドイツで報道される情報源も日本の報道と同じです。
東電や政府の発表、またそれを報道した日本の報道の翻訳などが入ってくるわけですが、その情報に対して例えば日本では「避難する必要はない、健康にただちに害はない」とコメントがつきます。
ドイツの報道はそのコメントも含めて、日本の政府はこう言っている、と流すわけですが、ドイツのメディア及び評論家、専門家などの見方がそこへ入ってきますので、その捉え方は違ってきます。
その捉え方の違いは、東京以北からドイツを始めとした外国人が退去したことにも出ています。

さて、これをどちらが正しいかどうか、ということは簡単には言えないと思いますが、しかしながらこの差は何なのだろうと疑問に思います。
事故が起きている当地の日本では、そうした報道や情報の違いがあることに気がついた人々が不安になるのも当然です。

ちなみに、外国と同じような対処や見方を提言する専門家やジャーナリストも日本には多くいるわけですが、それは主な報道メディアには出てきません。
これもなぜだろう?

パニックを引き起こさないため?不安を煽らないため?

しかし不安になるのは、何かが隠されている、と感じるからなのです。
パニックになるのは、その事態に対して心の準備ができていないからです。

私個人としては、東電、政府を始め、マスコミの報道にも不信感があります。元々、原発産業が過去にこれだけ事故を起こしながらも続いてきた、また今なお続いている状況は、これらの組織が作り上げてきたものであり、それを私たちが享受してきたという流れがありますから、やっぱり信用できないな、と思ってしまうわけです。しかしながら、全てが嘘、ということもないだろうと言う自制は自分の中に持っておこうとは思っています。

が、更にその不信感を強めることがありました。

日本でも報道されていますが、福島の事故以降、ドイツでは原発反対運動が再燃し、先週には各地で25万人規模のデモに膨れ上がりました。原発を持つ州の州議会選挙が先週末にあったためにそれにも絡んだ政治的な動きとなりましたが、それまで60年近く現政権と同じ保守政党が州政権を握ってきた所で、保守党は大敗し、環境政策を進める緑の党が政権を取ることになったのです。このバーデン•ビュルテンベルグ州と始めとした南ドイツは昔から保守派が強く、そのイメージが常々大きくあったところへこの変化は本当に凄い。

さて、話が少しずれました。
昨日、ドイツでは、東京でも反原発のデモがあったと報道されました。その参加人数1000人程。
こんなに重大な事故が起きている当地でこの規模なのですか?
しかもこのデモのことは私は朝日、読売やヤフーのトップページ等のニュース欄では目にしていません。

そのことについてはこんな理由もあるそうです。
東京・銀座で1200人規模の原発反対デモ

でも、通常のデモだったから、という理由で報道されないものなの?
こうした動きは敢えて無視なのですか?まだ事故が続行中でその段階ではない?それともまだ原発は安全なものだという企業とマスコミは繋がりたいのですか?

少なくとも私の周りでは、今回のことを受けて、脱原発へ考えを強めている人は多いです。そしてそれに伴って生活を変えていかなければと。
でもそんな動きの情報は表に出てこない。
さて、この事故を受けてこの国を背負っていくのは、私たち、そして更に若い世代です。
私たちにはインターネットというメディアがあります。それを使って何ができるだろう。

私は海外在住です。日本の家族や友人たちを守りたくても直接は届かない。
今私にできることは何だろう。ネット?

マスコミが報道しないこと、東電や政府が発表しない見解や情報がネットにはたくさんあります。
デマ、ではありません。それぞれ過去の事例や研究から出てきた、ある正しい見解です。
それらの情報をマスコミが表に出さないのならば、私たちが回していきませんか?
情報を回して、それを元に考え、行動に移していけるかどうか。

まずは知ることです。怖いから見ない、知らない、のでは、もっと怖いことがあとで来ます。
今回の事故はそのことを突きつけてくれているような気がします。

情報を回していきませんか?
デマかどうか、皆で検証し、知っていき、そして何ができるかを考えていけるなら、それはこれからこの国を変える、そして復興させる大きな一歩になると思います。
1ヶ月前にエジプト及び中東諸国で起きたことへインターネットメディアが貢献したことはあるヒントになるかもしれません。

また書きますね。

ドイツ、ケルンより、中沢
2011.03.22 Tuesday

ハラマキワークショップのお知らせ

 ドイツより中沢です。
このたびの震災の被害に合われた方々へのお見舞いを申し上げますと共に、
皆様、ご無事でいらっしゃることをお祈り致します。

さてとあるメディアアート関係のメールニュースで回ってきたワークショップの情報を転載させてください。
メディアアートととは関係ありませんが、この情報が錯綜する中で疲れた心を癒しつつ、かつ被災者の方々へ送る物を作るワークショップ、とのことです。
ご興味あればぜひ。

------------------(以下より転送歓迎です)---------------------------------
JUGEMテーマ:アート・デザイン


東北関東大震災の被災地に送るため、古いセーター、余っている毛糸玉など持ちよって、腹巻きやネックウォーマー、レッグウォーマーなどを作るワークショップを行います。
編み物初挑戦の方、ハイパーニットクリエイターの力石咲さんが教えてくださいます。
作るのは苦手だけど、どんなふうなのか見にいきたい!という方も歓迎です。
会場のカモ・カフェは通常営業中ですので、お茶のみだけでももちろんOKです。
みんなで集まって、お話しながら手を動かしながら気分転換しませんか?
できたものは、被災地の避難所に物流が再開したら送れるように調整中です。
参加お待ちしております!

日時:3月24日(木)12時〜18時(お好きな時間にいらしてください。途中退場も可です)
ニット講師:力石咲さん(ハイパーニットクリエイター/http://muknit.com/)
料金:参加費として、カフェで1オーダーお願いします。
材料:毛糸、古いセーター、編み針などはできればご持参ください。(持っていなくても参加可)。また、毛糸だけでなく、フェルトや布を使って何か作りたい方もぜひ。
会場:にしすがも創造舎カモ・カフェ 
http://camo-cafe.blogspot.com/
東京都豊島区西巣鴨4-9-1(旧朝日中学校)
にしすがも創造舎1F
*おいしい自家焙煎コーヒーとあたたかい手作りメニューがあります。
[アクセス]
★都営三田線
西巣鴨駅A2出口より徒歩1分
★都電荒川線
新庚申塚駅より徒歩3分
いらっしゃる時は、交通機関の運行情報、地元の停電時間等によく注意されてからいらしてくださいね。

企画・問い合わせ先:ゴーライトリー(email@go-lightly.org)

http://bit.ly/hDY5Ah
http://twitter.com/#!/golightly_inc/status/49840935051345920

一日も早く、身も心もゆっくり休まる日が来ることを祈っています。
そしてまた元気な新しい一歩を踏み出せますように。


--------------------------------------------------------------------------------
Dear folks,
I'll announce a workshop to make a haramaki (belly-warmer tie).
I hope it'd be good for many people who are tired for too much information about the Japan earthquake and the accident of the nuclear power plants in Fukushima. So I think the work of hand-making of protection against cold  would be treatment for us and useful for assistance to the affected people. Also to have a meeting/chatting would be good for Tokyo stressful people. Our company named golightly inc. is considering to send the fruits of this workshop to the disaster area after logistics restart normally.

Date and Time: 12:00 - 18:00, 24th March (You can be any time during open cafe hours.)
Venue: Camo cafe at Nishi-sugamo Souzousha, 4-9-1 Nishi-sugamo, Toshima-ku, Tokyo
Tutor: Saki Chikaraishi (Hyper knit Artist / http://muknit.com/)
Fee: free, one order at the cafe required.
Ingredients: Please bring used-sweater or knitting yarns etc. We prepare some (not many) ingredients for your needs.
Inquiry: email@go-lightly.org
2011.03.08 Tuesday

TVF入賞作品松本上映会

3月10日に松本に行くことになりました。
松本市在住でTVFには幾つもの作品が入賞している吉野和彦さんが、自主企画で上映会を開催します。いつも個人でこういう企画を行っている方です。山岳ビデオの世界では有名な吉野さんが、個人映像にかける情熱にはいつも頭が下がる思いです。
僕は作品の解説などで参加させて頂きます。いろいろと地元の方とお話しができればと楽しみにしています。
お近くの方はどうぞご来場下さい。

 「市民がつくるTVF ( 東京ビデオフェスティバル ) 入賞作品上映会」

日程  2011年3月10日(木)【開演】18:40 【作品上映】18:50〜20:45
会場  松本市教育文化センター 3階(松本市里山辺2930-1) TEL:0263-32-7600
定員  先着165名
入場料 無料
問い合わせ  吉野 和彦 E-mail:yosinokazuhiko@rainbow.plala.or.jp
                  TEL:0263-32-2965(18:00以降にお願いします)

【上映作品】

1.「猛暑 親爺の呟き」 青柳 完治
2.「伊藤新道のミヤマモンキ<30年ぶりの高瀬川遡行>」 御法川 直樹
3. 「海の人」 薩摩 浩子
4. 「国労バッジははずせない!−辻井義春の闘い− 」 湯本 雅典
5. 「コラージュルージュ」 高田 涼平/三好 萌加
6. 「土俵」 平野 隆弘
7. 「栄子〜70歳〜」 大井 貴之
8. 「何時か家族に」 吉野 和彦

協力  NPO法人市民がつくるTVF、TVF入賞者の皆さま
2011.03.06 Sunday

第19回アースビジョン 地球環境映像祭

 グループ現代の川井田さんからの案内状に興味深いタイトルの作品があった。
『未来への診断書ー水俣病と原田正純の50年』(2010年 54分)はKTT(熊本県民テレビ)が制作したドキュメンタリーだった。作者の安松直朗さんは1978年生まれだ。2001年に熊本県民テレビに入社して2003年から報道部の記者になり、水俣問題を担当してきたのだという。熊本県はこの県民テレビを始め、地道な水俣取材が続けられていて、これまでにも何作品かを見てきた。このところ関係が遠くなっているが、「地方の時代映像祭」でも力強い水俣取材の成果を見てきた。
原田正純さんとは一度だけお会いしたことがある。チッソ水俣工場の第一組合解散式でのことだった。叔父が最後の書記長となり、同期入社の六名が次々に定年退職となる2003年の春だった。原田先生の姿を見た時に、これまで何度も土本作品やTVドキュメンタリーで見ていた「本物」の姿に興奮した。その後、川井田さんにあった時に、「原田先生のドキュメンタリーを作りたいですね」と話したことを思い出した。簡単にはいかないことは承知だったが、自分ではなくとも、誰かが何とかその仕事を映像で残さなければならない人だと思っていた。チッソ第一組合が使っていた事務所は、その後会社に返され、資料の類は原田先生の熊本学園大学が水俣病の研究施設で引き取ったという。その施設も、このドキュメンタリーのなかで見ることが出来た。
作者の安松さんのように、事件が起こってから50年後に取材に取り組む人がいることは心強い。しかし、安松さんはこの春から東京支社の営業部に配置転換になったらしい。後進に引き継いだとは話していたものの、この種の話題が若い人にどれだけ訴求力があるのかは判らない。
原田正純さんの仕事とは、言うまでもなく水俣病について井戸を掘り、種を蒔き、少しづつ収穫するような、ライフワークである。その生活のほとんどが水俣病との関わりであったことは、著作を辿れば想像できる。なかでも『水俣学講義』のシリーズは圧巻だ。水俣病が「学」となりうることは、病をめぐる複雑な関係がまさに日本の縮図であったことからも理解できる。医学として、社会学として、あるいは環境学として、多くの負の遺産を残している。
作品上映後の質疑で、安松さんの「被害者であり、加害者であった〜」という発言に、会場から言葉の使い方に注意を促す発言があった。簡単に使った言葉ではなかったと信じたい。患者やが加害者でありうる可能性とは、チッソ城下町であった水俣の性格を示しているだけでなく、緒方正人さんの著作にもあるとおり「私がチッソであった」ということだろう。この言葉を正確に理解することは、当の患者や以外は不可能であろう。それでも想像力はある。患者やとしての申請を取り下げた緒方さんは、支援団体との関係もこじれたはずだ。まさにそうした人間関係、社会的な力のバランスが、事件をさらに複雑なものにした。それは、行政主催のものとは別に、患者主体で行われている毎年の慰霊祭にも現れている。
本当に「水俣病は終わっていない」のだと思う。

ところで、原田さんがカナダに検診に行くシーンで、車の後部座席に大類義さんがいるのを発見した。大類さんは、僕が日大映画学科の研究室につとめていた頃の上司だった。1987年の土本さんの作品上映会の仕事をするなど、その前後から土本さんと交流し、ドキュメンタリーについていろいろなことを教えてくれた。大類さんがこの頃こうした研究をしていたため、多くのドキュメンタリー映画をフィルムで見ることも出来た。
大類さんは奥さんと一緒にカナダに住んでいる。もう20年くらいになるだろう。そこでの活動については、実は多くのことを知らなかった。今回のドキュメンタリーでは、現地のコーディネイトや診察時の通訳などをしているようだった。水俣通じて、ずっと繋がっているのだな、と思った。

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